2022-10-21

【政界】「私が先頭に立つ」と意気込む岸田首相 トップダウン型の政治手法へ転換か

イラスト・山田紳


決断も支持率急落  岸田が参院選後にリーダーシップを発揮して素早い決断をしたのが、安倍の「国葬」実施だ。安倍が街頭演説中に凶弾に倒れて1週間も経たない7月14日に表明している。記者会見した岸田は、安倍が①憲政史上最長の8年8カ月も重責を担った②大きな実績を様々な分野で残した③国際社会から極めて高い評価を受けた─ことなどを理由に挙げた。

 当初は多くの国民も理解を示していた。しかし、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と自民党国会議員との関係が問題視され、安倍本人にも重ねられたことに加え、国葬費用を警備や外国要人の接遇にかかる経費などを除いて発表したことなどが不評を買い、徐々に反対論が膨れていった。

 そこで岸田はさらなる決断をする。「国葬儀の実施を判断した首相として、ご意見、ご批判を真摯に受け止め、正面から答える責任がある」として、国会の閉会中審査に出席する考えを表明したのだ。与党内にあった「野党の追及を受け、十分な答弁ができないとマイナスが大きい」(自民党幹部)といった慎重論を押し切ってのことだった。

 岸田は9月8日の閉会中審査で「各国からの敬意と弔意に対し、日本国として礼節を持って応えることが必要だ」と訴えた。実際、約4200人が参列した9月27日の国葬には、218の国や地域、国際機関から約700人もの要人が参列した。岸田は翌28日、「国内外から寄せられた多くの弔意に丁寧に応えることができた」と胸を張った。

 しかし、国民の反応は冷ややかだった。読売新聞の世論調査(10月1、2両日実施)では国葬実施を良かったと「思わない」という人が54%にのぼり、「思う」の41%を上回った。朝日新聞の世論調査(同日実施)では「評価しない」が59%に達し、「評価する」は35%にとどまった。

 岸田の決断が裏目に出た格好となった。岸田が打ち出している原発・エネルギー政策の転換も支持、評価が多いとはいえ、岸田の決意や思いが国民に届かなければ、国葬実施の決断と同じような道を辿る可能性がある。

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