2022-10-21

【政界】「私が先頭に立つ」と意気込む岸田首相 トップダウン型の政治手法へ転換か

イラスト・山田紳

 それが最近、「私自身が先頭に立つ」というフレーズが目立つのは、ボトムアップ型からトップダウン型の政権運営への転換を意識しているからにほかならない。岸田にとって当選同期の盟友であり、首相として「お手本」にしてきた安倍が急逝したことで、自身が先頭に立たなければいけないという思いもありそうだ。

 ただ、参院選後の数カ月で内閣支持率は急落した。岸田が先手を打って決断した国葬実施や内閣改造も政権浮揚にはつながっていない。原発・エネルギー政策の大転換も「絵に描いた餅」に終われば支持回復は望めない。

 これから、ロシアによるウクライナ侵略など安全保障環境の変化を受けた「防衛力の抜本的強化」のための予算や財源確保の議論が本格化する。旧統一教会問題を巡り、悪質商法や悪質な寄付による被害者救済策や消費者契約に関する法令の見直しも加速させる必要がある。

 さらに、新型コロナ対策でも機動的な臨時対応を可能にするための感染症法改正作業などが急務だ。物価高が続く中で「構造的な賃上げ」も実現させなければ国民の不満は膨らむ。

「信頼と共感。この姿勢を大切にしながら正道を一歩一歩、前に向かって歩んでいく。この国の未来のために全身全霊で取り組んでいく」。そう決意を示して所信表明演説を締めくくった岸田。

 物価高・円安対策、防衛力強化など厳しい環境下で、民間経済の成長を促す政策が求められる。経済の成長なくして政治の信頼は出てこない。岸田の決断力が求められる局面だ。(敬称略)

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