2022-12-28

【初の外国人社長】三菱ケミカルグループ・JM・ギルソンの「サステナブル戦略」、CO2原料化など推進

ジョンマーク・ギルソン・三菱ケミカルグループ社長




脱炭素に向け「CO2」を原料に 

 リスクの多い経営環境下にありながら、三菱ケミカルを含む日本の製造業は、GHG(温室効果ガス)を2030年に13年度比46%減、2050年には「脱炭素」という大きな目標の達成が求められている。これは投資先行で、なかなか利益には結びつきにくい取り組みだけに、難しいカジ取りが求められる。 

「2030年の目標はクリアに見えており、達成していきたい。しかし2050年となると明瞭さが失われる。その間に新たな技術の開発を期待している」 

 また、ギルソン氏はGHG削減に必要なこととして、2つの要素を挙げる。 

 第1に「グリーン電力の購入」。これには日本政府が原子力発電所の再稼働、新設に踏み切るかも大きな要素となるが、購入に対するインセンティブを付けることも必要になるかもしれない。「原子力発電なしには、日本全体として目標の達成は難しいだけに再稼働は必須の条件」 

 第2に自社のエネルギー転換。例えば、設備投資額の10~15%を投じて、現在石炭焚きのボイラーをLPG(液化石油ガス)に変えていくといったことが考えられる。さらにその先には水素やアンモニアへの転換も考えられるが、いずれにせよ大きな投資が必要。 

「我々が今後、この分野で行う投資はリターンを求めてのものではない。稼働している設備を切り替えるなど、脱炭素には経済的コストがかかるものだということを理解してもらいたい」 

 一方、将来に向けた技術開発も続けている。三菱ケミカルは長年にわたって「人工光合成技術」の開発を進めてきた。これはCO2、太陽光、水素から化学品原料を製造するもので、悪者とされるCO2を「原料化」する重要な研究。 

「脱炭素に向けては、エネルギーの効率化に加えて、原材料にも着目する必要があると考えている。人工光合成はその中の技術の1つだが、技術開発が非常に難しく、実現までには時間がかかる。商業化に向けてはエネルギー効率を現在の1%から、最低でも10%にまで引き上げる必要がある。実現はまだ約束できないが、最善を尽くす」 

 ギルソン氏は21年4月に社長に就任して以降、様々な場面で「低炭素社会で勝者になる」と訴えてきた。「そのメッセージは今も変わっていない」としながら「化学業界が、その方向に向かうことは間違いないが、どのように達成していくかが焦点になっている。さらに明確化、具体化していかなければいけない」と続ける。 

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