2023-05-08

三菱マテリアル・小野直樹社長に直撃!「安全保障、環境問題が重くのしかかる中、『循環をデザインする』をキーワードにした理由」

小野直樹・三菱マテリアル社長




市場ができる前に先んじて取り組む

 ─ 新たな取り組みとして、自動車の電動化を受けて、金属リサイクルを手掛けるエンビプロ・ホールディングス(静岡県)と連携して、リチウムイオン電池(LIB)のリサイクルの共同技術開発を発表しましたね。使用済み電池の廃棄が増えるのは2030年頃と見られていますが、早めに取り組む理由は?

 小野 自動車の電動化が進む中、欧米、特に欧州ではリサイクルがかなり進んでいます。それを考えると、日本で電池が廃棄される時期に合わせていたのでは遅いだろうと。

 やはり先んじて進めておくことが、リサイクルの肝である「集荷」に生きてきます。集める力があるからこそ、処理の力を生かすことができる。ですからできるだけ早く取り組むことが必要だと考えました。

 蓄電池のビジネスは電動車のみならず、スマートフォン、再生可能エネルギーも含め、確実に拡大すると見ています。コストや性能のバランスを考えても、LIBが主力だろうと思いますから、そこにターゲットを合わせていく。

 ─ この事業を成長させる上での課題をどう見ますか。

 小野 マーケットとの関わりだと思います。例えば自動車で言えば、どういう形で、どこで廃棄されていくか、法体系がどうなるかは注視していく必要があります。一方で、どういう状況であろうとも、集めて処理するルートさえ確保できていれば、その時の状況に合わせてビジネスを組むことができます。いずれにせよ、当社1社だけでできることではないと思いますから、様々なパートナーと組んで進めていく必要があります。

 ─ 主力素材である「銅」の先行きをどう見ていますか。

 小野 中長期の話ですが、銅が持つ伝導性の高さ、高電圧・大電流への耐久性などの性能を考えると、将来的にも銅に代わる素材はそう簡単には生まれてこないだろうと見ています。

 様々な機関が銅の将来予測を出していますが、需要が増加することは間違いありません。一方で、天然資源としての銅鉱山は、開発条件が徐々に厳しくなってきています。ですから開発と同時に、使用済みの金属資源・銅の循環もさらに進めていく必要があります。

 ─ 銅鉱山開発投資への考え方を聞かせて下さい。

 小野 モデルケースとなり得るのは、チリの「マントベルデ銅鉱山」の開発で、当社は30%の権益を保有しています。権益分の銅精鉱の確保を目論む一方、鉱山のオペレーションはそれに長けた現地企業に担ってもらいます。

 また、銅鉱山開発に対する我々の1つのポリシーは、財務状況に合った中規模クラスに投資するというものです。

 もう1つは、銅精鉱を持ってきて日本の直島(香川県)や小名浜(福島県)の製錬所で利用しますが、これは銅の生産と同時に、Eスクラップ(都市鉱山)を処理するためのベースにもなります。ですから、なるべく銅精鉱からの不純物は少ない方がいいんです。そうした条件に合致した鉱山に投資していくというのが基本的な考え方になります。

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