2023-05-19

【政界】維新の伸長で高まる改憲の機運 岸田首相は指導力を発揮できるか

イラスト・山田紳



 憲法第54条第1項の規定により、解散から40日以内に衆院選を実施し、そこから30日以内に国会を召集しなければならない。一方、同条第2項は、解散後に緊急の必要があれば内閣は参院の緊急集会を求めることができると定めている。

 日本維新の会など3党派の条文案は、この「40日+30日」を参院の緊急集会の有効期間とみなし、「国政選挙の適正な実施が70日を超えて困難」であることを議員任期延長の要件にした。被害が長期化したら、緊急集会だけでは国会本来の機能を担保できないというわけだ。

 緊急集会は参院の独自性に関わる仕組みだ。しかし、参院憲法審でも「緊急集会規定は平時の制度であり、緊急事態を想定していない」(自民党の松川るい)など緊急事態条項必要論が優勢で、緊急集会の活用を主張する立憲民主党などは押され気味だった。

 しかも、同党は「場外」でミソをつけてしまった。参院議員の小西洋之が3月29日、記者団を相手に、自身と関係ない衆院憲法審を「毎週開催はサルのやることだ」と批判したのだ。他党の猛反発を受けて陳謝したが、事態を重くみた同党は参院憲法審から小西を外した。

 小西といえば今国会で、放送法の政治的公平性に関する解釈を安倍政権が強引に変えようとしたことをうかがわせる総務省の行政文書を暴露し、にわかに注目を集めた。ただ、自民党は「岸田政権には痛くもかゆくもない」(幹部)とまともに取り合わず、ついには小西の方が失言で自滅した。

 立憲民主党は昨年の臨時国会から日本維新の会との「共闘」を進め、政府・与党にプレッシャーをかけてきた。しかし、馬場は小西の失言を「立憲民主党によくある大ブーメラン」と切り捨て、「いろいろな政策で信頼関係が完全に損なわれているので、協調は当面の間、凍結する」と宣告した。野党は国会で存在感を示すしかないのに、立憲は後半国会の展望を描けずにいる。

 改憲に反対する共産党も党首公選制を唱えた党員を相次いで処分したのが裏目に出て、統一地方選で苦戦した。護憲勢力は追い込まれている。


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