2023-05-19

【政界】維新の伸長で高まる改憲の機運 岸田首相は指導力を発揮できるか

イラスト・山田紳



 緊急事態条項について、衆参両院の憲法審で方向性は固まりつつある。では、同条項が改憲の突破口になるかといえば、そう簡単でもなさそうだ。ある与党関係者は「国会議員の任期延長を国民投票にかけるのは難しい。国民の関心が高い9条改正を問うべきだ」と指摘する。どういう意味か。

 長年にわたる国政選挙の低投票率は、国民の政治への関心が薄れていることを示している。しかも、SNS(ネット交流サービス)の発達によって「格差」への不満は顕在化しやすくなった。もし任期延長が国会議員の「お手盛り」だという批判が広まったら、国民投票で過半数の賛成を得る目途は立たない。

 自民党副総裁の麻生太郎は4月17日、福岡市での講演で自衛隊の体制を強化する憲法改正に言及し、「岸田は安倍にできなかったことをしている。リーダーシップは安倍よりあるのではないか」と持ち上げた。

 単なるリップサービスではない。そこには麻生なりの計算が透ける。安倍なき今、岸田が9条改正に本気で取り組むなら、来年9月の総裁選で党内保守派も岸田を降ろす理由がなくなる。ことあるごとに衆院解散カードをちらつかせて、求心力の維持にきゅうきゅうとする必要もない。

 ただ、「平和の党」を掲げる公明党は9条改正に応じる気配はない。あえて「本丸」を目指すのか、それとも多くの党派が合意できる緊急事態条項から着手するのかは、連立政権の枠組みにも関わる難問だ。

「宏池会(岸田派)の本質は徹底的な現実主義」と常々語る岸田は、リーダーとして憲法問題に明確な方針を打ち出す責任がある。(敬称略)

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