2023-05-29

【政界】ウクライナや韓国外交で支持率上昇 三度目の正直を狙う岸田首相の奇策

イラスト・山田紳



年内解散は既定路線

 一層「解散風」は強まりそうだが、岸田政権内には慎重論も根強い。

 次期衆院選は「一票の格差」是正のため小選挙区が「10増10減」される。6月解散の場合、自民党内の候補者調整の時間が十分に確保できず、混乱することが想定される。さらに、岸田が注力する防衛力強化と子供・子育て対策の財源を巡り、国民の負担増につながる「増税」議論が本格化するタイミングと重なる。衆院選で増税が争点となれば大きな逆風になる。

 先の統一地方選と衆参5補欠選挙で日本維新の会が躍進したことに対する警戒感もくすぶる。「自民党支持層がかなり維新に流れた。無党派層も自民党のことを厳しく見ている」(自民党関係者)とされ、統一地方選の「選挙疲れ」を癒すため、一定の時間を置くべきだとの意見は根強い。

 岸田が「6月解散」を見送った場合、秋の臨時国会での衆院解散が有力視される。

 自民党役員の任期は「1期1年、連続3期まで」と定められており、副総裁の麻生太郎や幹事長の茂木敏充ら現役員は今年9月に任期が切れる。そのタイミングで内閣改造・党役員人事を行い、人心一新による「ご祝儀相場」のあるうちに衆院選に臨むというシナリオだ。

 しかし、新しい閣僚・党役員にスキャンダルが発覚したら、ご祝儀相場が吹き飛ぶばかりか岸田政権に厳しい逆風になる。もちろん、自民党が警戒する日本維新の会をはじめ、野党側に選挙準備を整える時間を与えることになる。

 9月以降になると、10月30日に衆院議員の4年の任期は折り返しを迎えるため、いつ衆院選があってもおかしくないという議員心理が働く。自民党議員が浮足立ち、来年9月の党総裁選は次期衆院選を、誰をリーダーにして戦うかという「選挙の顔」選びとなりかねない。党内抗争が顕在化し、岸田内閣の支持率次第では「岸田降ろし」が始まり、解散カードを切るタイミングを失ってしまう。

 年内の衆院解散が既定路線となる中で、岸田は表向き防衛力の抜本的強化やエネルギー政策、賃上げを含む経済政策、子供・子育て政策などの重要政策に取り組む姿勢を崩していない。「重要政策の一つ一つを前進させ、結果を出す。いま衆院解散・総選挙は考えていない」と繰り返している。

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