2023-05-29

【政界】ウクライナや韓国外交で支持率上昇 三度目の正直を狙う岸田首相の奇策

イラスト・山田紳



「宏池会」の看板にこだわる首相

「岸田首相は自民党の伝統派閥『宏池会』の看板に誰よりこだわっている。特に宏池会創設者の池田勇人(元首相)を意識している」。岸田に近いある議員はそう語っていた。

 実際、岸田は国会質疑で、手本にしている政治家は誰かを問われ、「地元の広島においても、政治活動においても参考にさせていただいている池田勇人首相を大きな目標としている」と答弁している。

 岸田は、首相在職日数で宏池会第3代会長・大平の554日を今年4月11日に抜いた。岸田が7月10日まで政権運営を続けていれば、第5代会長の宮沢の644日に並ぶ。

 もっとも、岸田が目指しているのは池田の通算在職日数1575日だとされる。池田に肩を並べるのは2026年1月25日だ。来年9月の自民党総裁選で再選されれば27年9月までの政権運営が可能になり、「池田超え」が視野に入る。そのため総裁再選を睨んだ解散戦略を綿密に練っているとみられる。

 自民党中堅は「年内に衆院解散・総選挙をすれば、来年9月の党総裁選の時に任期がまだ3年残っている。総裁選が『選挙の顔』選びにならず、岸田の総裁再選の可能性が広がる」と語る。総裁再選のためには年内解散は避けて通れないというわけだ。

 ただ、宏池会出身の首相とサミット開催年の衆院解散は相性が悪い。

 1979年6月の東京サミット後、当時の首相・大平は衆院解散・総選挙に踏み切ったものの、一般消費税の導入問題が争点となり、自民党は過半数を割り込んでしまう。また、93年7月の東京サミットは衆院選の最中の開催だった。首相は宮沢。衆院選の結果、自民党は初めて野党に転落している。

 広島サミットの今年はどうなるだろう。宏池会首相によるサミット開催年の衆院解散は、「二度あることは三度ある」となってしまうのか。それとも岸田が「奇襲」を仕掛けて「三度目の正直」を勝ち取ることができるのか。いよいよ岸田の決断の時が近づいている。(敬称略)

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