日韓の〝壁〟を取り払う
「ええ、双方に壁があったんですね。ほとんどコミュニケーションしてこなかった。だけど、株式保有のオーナーシップであったり、そもそも会社ができたDNA(遺伝子)から考えても、本当は同じグループ、一緒のグループなんですよ。ロッテというのは、俯瞰してみると、日韓にまたがって、アジア、アメリカ、ヨーロッパに広がるグローバルカンパニーです。だけど、日韓それぞれが個別に経営してきた」
そのような日韓バラバラの経営であったのが、創業者の次男、重光昭夫氏が「全体の会長になって、シンプルなガバナンス体制になった」と玉塚氏は語る。
「重光昭夫会長が韓国の会長になり、日本の会長になり、全体の会長になって、すごくシンプルなガバナンスストラクチャーになった。その段階で僕は来ましたので、会長と一緒に今、日本だ、韓国だということではなくて、グループ全体でどういう成長戦略を描くのかという視点がすごく重要になってきたんですね」(インタビュー欄参照)。
時代は大きく変化し、状況は刻々と変わっていく。コロナ禍はひと山越えたが、依然、気は許せない。ウクライナ情勢も流動的で、地政学リスクは急激に変化する時代である。
日本も韓国も中国とは隣国同士だし、韓国は北朝鮮とも地続き。環境問題は共通の課題であり、人口減、少子化・高齢化問題もそうである。「自国のマーケットだけではサバイブできない」というのが共通の認識。
「日韓合わせてグローバル市場でどういう絵を描くかという発想がすごく重要」という玉塚氏の認識である。
アジアで高い存在感のロッテグループだが…
韓国ロッテ側にも環境変化、地政学リスクを考慮して、緊張感は強くある。韓国五大財閥の一角に食い込む成長を遂げているわけだが、これから成長産業を追求していく上で、事業のポートフォリオ(戦略)の入れ換えも不可欠だ。
確かに1990年代以降、日本は〝失われた30年〟で、韓国側から見ると、日本は成長地域に入っていなかった。
しかし、「これからは日本も捨てたものではないし、マーケットも大きいという認識。韓国の事業シーズと日本が持っているいろいろな技術を掛け算して、どう、日韓、グローバルで成長していくかと。それを実行していこうと」という玉塚氏の考え。
同時に、韓国サイドから見ると、日本での存在感をどう上げていくかという課題。
ロッテグループは例えば化学(ケミカル)領域でもアジアで有数のポジション。
「ええ、マレーシアにもアメリカにも、また今度インドネシアにも大きいプラントをつくりましたし、アジアでは大きな化学グループですけれども、日本ではプレゼンスゼロですからね。異常ですよ」と玉塚氏。
今後、日韓連携していく上で、ロッテの強さとは何なのか?
「それは、やはりブランドに対するコンシューマーレベルでの信頼感ですね。ロッテは本当に、日本では『お口の恋人』だし、韓国ではもうそこら中でロッテなので、両方で、コンシューマーレベルでここまで受け入れられているブランドはないですね」
そういう中、韓国の大手財閥も日本市場攻略ということでは、攻めあぐねているのが現実。例えばサムスン(三星)グループは半導体分野で圧倒的な存在感だが、日本のコンシューマーレベルで親和感があるかとなると、まだ圧倒的ではない。ヒュンダイ(現代)グループは自動車分野で強いが、日本市場での浸透度はまだまだ低い。
そうした中で、韓国ロッテグループは、どう日本市場に接してくるのか?