2023-07-19

日本取引所グループCEO・山道裕己の「日本に魅力はある。内向きにならずにもっと外を向いて」

山道裕己・日本取引所グループ・グループCEO




日本再生へ向け企業の踏ん張りこそが

 環境変化の激しさということでいえば、地政学的リスクが高まり、経済安全保障の確立が、経済運営にも重くのしかかる。

 ロシアのウクライナ侵攻から1年半近くが経つ。ロシアの体制内でも、民間軍事会社『ワグネル』が〝反乱〟を起こすなど、亀裂が生じている。

 また、世界経済での比重が重くなった中国の変化。1978年の改革開放以来、米国に次ぐ世界2位の経済大国にのし上がったが、最近、経済苦境のニュースが相次ぐ。不動産業の不振、若者の失業率の高さなど、先行きに懸念も出る。

 ひと頃、中国は〝世界の工場〟とされ、世界中から投資が相次いだが、米中対立、経済安全保障の観点から、投資の見直しも進む。

「世界中の投資資金がある意味、中国に集中していたのが、本当に中国一辺倒でいいのだろうか、そういう危惧はありますね。そういう状況下で、投資を振り分ける他の国はアジアでどこにあるのだろうとかね。経済規模にしても、あるいは民主主義で、法治国家で、規制環境も政治も非常に安定しているというので、やはり日本が候補のナンバーワンになっているのもこれまた事実ですね」

 W・バフェット氏が日本への投資を重視する動きも、そうした世界の潮流と連動したものという解釈もできそうだ。

 山道氏は、「そのあたりの相乗効果が出ているかなと思います」としながら、強調する。

「ただ、何回も申し上げるように、短期的な(株価の)上がり下がりというのは、われわれは気にしませんので、中長期的にやはり日本の企業の企業価値が向上していくというような取り組みをしていきます」

 日本が90年代末からデフレに苦しまされた。デフレ状況、経済低迷から脱しようと、アベノミクス(安倍晋三政権による経済政策、2012年末から2020年まで)も打ち出された。

 財政出動、金融緩和による超低金利政策で何とか脱デフレは実現。ただ、潜在成長率で見ると、安倍政権前の10年と、第2次安倍政権登場(2012年)後の10年を比べると、潜在成長力の伸び率は同じ0.5%程度で、変わっていない。

 実質成長を遂げていくには、経済の主役・民間経済の踏ん張りが不可欠である。

 その意味で、日本取引所グループの「中長期に企業価値を上げる取り組み」が注目される。

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