2023-07-10

第一生命新社長・隅野俊亮の「新・生保戦略」「投資初心者に寄り添うコンサルを」

隅野俊亮・第一生命保険社長

資産形成が注目される今、生保の役割とは何か─。「我々がメインのターゲットとするのはマス層」と話すのは第一生命保険社長の隅野俊亮氏。同社は、生命保険会社としては珍しく、資産形成に向けたコンサルティング営業を強化している。今後、専門部隊を1000人にまで拡大する計画。中でも、「投資初心者」にいかにアプローチするかが問われる。2020年の不正事案、コロナ禍を乗り越え、反転攻勢に出られるか。


営業のデジタル化は試行錯誤が続く

「当社の存在意義は、フェイス・トゥ・フェイスでコンサルティングができる生涯設計デザイナー(営業職員)、これに尽きる」と話すのは、第一生命保険社長の隅野俊亮氏。

 第一生命ホールディングスはグループとして、他にも第一フロンティア生命保険やネオファースト生命保険、あるいはデジタルなど、複数のチャネルを持つが、第一生命が担うのは、あくまでもリアルの営業職員チャネルだと強調。もちろん、時代の変化に合わせてのデジタル武装は大前提。

 この3年ほど、生命保険業界全体でコロナ禍によって、それ以前のリアルによる顧客接点が持ちづらくなり苦戦が続いてきた。今は、リアルとデジタルのハイブリッドによる営業を確立すべく取り組んでいる最中。

 全営業職員にスマートフォンなどのデジタル端末を配布し、顧客とオンラインミーティングができるようにしているが「デジタルの能力を最大限発揮できるレベルまでという意味では、まだ濃淡の差があるのは事実」と、まだ試行錯誤が続いている。

 ただ同時に「営業職員も、全員が同じ型である必要はない。例えば、デジタルは弱いけど、人間力で圧倒的にお客様を掴むことができるメンバーは、その強みを発揮すればいい」と隅野氏は言う。最低限のデジタル武装をさせた上で、それぞれの営業職員の強みを発揮させるために組織としての柔軟性を持つことを意識している。

 第一生命の場合はそれに加えて、2020年10月に、山口県の女性元営業職員が顧客から19億円超の金銭を不正に取得するという不祥事が起きた。

 一部の人間が罪を犯したことが、会社全体の信用にかかわるということが強く実感された不祥事。これに対しては、データ解析などで不正を予兆するなど仕組み面での取り組みと同時に、営業で困っていることはないのかといった悩みに応える対話も重視してきた。

「この2年間は、この事案を大いに反省して、立ち止まるような形でコンプライアンス重視を再徹底してきた。営業現場には負荷をかけたが、必要なプロセスだったと思う」と隅野氏。

 この間、営業活動を抑制したことに加え、コロナ禍もあって営業成績は厳しい状況となり、23年3月期の新契約年換算保険料は38%減となった。

Pick up注目の記事

Related関連記事

Ranking人気記事