2023-07-10

第一生命新社長・隅野俊亮の「新・生保戦略」「投資初心者に寄り添うコンサルを」

隅野俊亮・第一生命保険社長




「大量採用・大量脱落」と決別できるか?

 ただ、コンプライアンス重視で「経営品質」を磨いてきたことは「健全な営業推進の大きな武器となり、他社との差別化につながる」(隅野氏)と前向きに捉える。そして、この2年間で不適切な事象は大幅に減少。

 23年4月からの新年度を「再スタート」と位置づけ、営業推進にカジを切った。「役職員の意識の高さは大きな進歩。ただ、文化的な話は少しでもスピードを緩めると、どうしても慣れてしまう。企業風土の改革には不断の努力が必要。継続していく」と隅野氏。

 もう1つ、生保業界共通の課題として、営業職員の「ターンオーバー」がある。これは「大量採用・大量脱落」のこと。

 営業職員は多くの場合、1~3カ月程度の研修で営業現場に出るが、なかなか営業ノルマを達成できず、給与が上がらないことなどがターンオーバーにつながってきた。

 隅野氏は「我々はターンオーバーと完全に決別するという心意気」と話す。第一生命ではコロナ前、不正事案前から、この取り組みを開始。

 具体的には、入社後5年間の安定した給与制度、入社後1年間にわたる「みっちりした」(隅野氏)研修、採用数の上限設定、採用時に適性検査「SPI」を導入し、採用基準を厳格化といった取り組み。

 特に意識したのは「社会保障制度」や「金融リテラシー」の教育。特に社会保障制度については、この知識がないとどうしても、拡販を指示された商品を売るだけになってしまう。

 そうではなく顧客それぞれの収入、生活スタイル、家族構成があり、それに合わせた公的保障があることを知った上で、補完すべき保険を提案するというのが、本来の生保営業の姿。

 そのため、研修では時間をかけて、一連の流れを習得させることを目指してきた。「かなり根付いてきた感覚がある」と隅野氏は手応えを感じている。そして今まさに、新しい研修を受けた営業職員が本格的に現場に出始めている。今期の業績に、その成果がどう表れてくるのかが、今から注目されている。

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