保険ニーズ多様化の中 社会課題解決に向けて
「生命保険のもともとの事業というのは、安心・安全を提供すること。これまで生保業界としては140年近くにわたって、生命保険商品、サービスを提供してきました。そのことによって、日本は世界に冠たる保険大国になったわけですね」
清水氏は、日本の生保会社が歩んできた歴史をこう総括し、次のような現状認識を示す。
「一方で、子細に見れば、若者の加入率が減っているとか、死亡保障から医療とか所得保障、資産形成といったニーズが多様化していますので、その対応はやってきているつもりですが、それが十分なのかどうかは自らに問わなければいけないと思います」(インタビュー欄参照)。
DX(デジタルトランスフォーメーション)の進化。このことは、生保各社の販売チャネルの多様化を加速。
かつては、生保会社と顧客の接点は営業職員が担っていたが、生保代理店も勧誘業務を担うようになり、〝銀行窓販〟といわれる金融機関の窓口販売、そしてネットを介してのやり取りといったように、販売チャネル、申し込みチャネルも多様化。
新規契約のチャネルを見ると、営業職員が顧客に直接会って保険商品を売るという対面形式が全体の半分を占める。保険代理店経由が約30%、金融機関経由が約15%、残りの約5%が通信販売という構成比率。
そういう状況下、清水氏は、「安心・安全を提供するのが生保の役割」として、今、社会課題の解決に注力。社会課題もまた多様化し、複雑になっており、その解決に貢献していく考え。
「例えば、地球環境、脱炭素、生物多様性、それに加えて、地域社会の活性化、さらに少子化の問題、子育ての問題といろいろあります。こうした社会課題に生保業界として貢献する。それを通じて、安心・安全を提供していく。こういう役割が重要になってきていると思います」
保険業界全体で取り組むべき課題
社会課題解決へ向けてのソリューションの提供─。
清水氏は、今年7月から生保協会の会長を務めている(任期は1年)。清水氏にとっては2度目の会長就任だが、1度目の会長時と比べ、この間の変化をどう捉えているのか?
「今回も顧客本位の運営、さらに推進を協会のテーマの1つに掲げていますが、これは4年前と変わっていません。変わっていないどころか、その後、協会長が変わっても、1年で交代しても、全ての協会長が顧客本位の業務運用の推進を言い続けている。これは変わらないと思います」
では、変わったのは何か?
「自分が前回、4年前に協会長を務めていた時と比べて感じるのは、社会課題の重要性、深刻さが大きくなっているということです。業界として取り組む必要性、そして生命保険会社への期待、役割、責任、これが増えていると感じます」
清水氏がさらに続ける。
「生命保険業界はそれができる業界だと思います。少子化にしろ、脱炭素化にしろ、地域活性化にしろ、生命保険業界ができることはたくさんあります」
では、そうした事業をどう進化させていくのか。