2024-03-11

翁百合・日本総合研究所理事長「企業は、企業価値向上と社会課題解決の『二兎を追う』成長戦略の実行を」

翁百合・日本総合研究所理事長




女性活躍、非正規問題をどう考えるか?

 ─ 翁さんは「令和臨調」(令和国民会議)の運営幹事も務めていますね。日本にとって「失われた30年」からの転換期の今、再生に必要なことは?

 翁 一言で言えば「人への投資」で生産性を上げていくことだと思います。そして国内投資をしっかり進めていく。

 終身雇用制は変貌しつつありますが年功序列型賃金など高度経済成長期の仕組みがまだ残っています。ジョブ型を含めそれぞれの企業に合った形の人事制度に変えていかないと、いい人材を採用できなくなります。デジタル人材などはジョブ型でなくては採用が難しくなっている。

 ジョブ型とメンバーシップ型のハイブリッドの人事制度を導入する企業も増えてきています。女性活躍を含め、多様な人材が活躍できる経済にしていくことが非常に重要です。

 ─ 少子高齢化で働く人が少なくなるという問題がありますが、対策をどう考えますか。

 翁 少子化対策もしっかりやっていく必要があります。児童手当などは出てきていますが、一方で、日本社会には性別役割分担意識が根強くあります。徐々に男性育休を取得する動きも出てきていますが、男性も女性も、潜在能力を発揮できるような働き方を柔軟に選べる企業にしていくことが大事です。

 男性も女性も家事や子育てをしながら、社会や企業に貢献できるような社会を目指す。そのためには企業経営者を中心に意識改革をしていかなければ問題は解決しないと思います。

 そして賃上げです。特に若年層の賃金はまだまだ低いですから、そうした方々の可処分所得が増えるような積極的労働市場政策が必要です。成長分野に行きたい人が移動でき、非正規の方々の年収が増え、将来不安が少しでも減るようにしていくことが少子化問題解決のためには非常に大事だと思います。

 ─ 日本では非正規が非常に増えていますが。

 翁 自ら非正規での働き方を選んでいる方々はいいのですが、不本意非正規が増えていることは問題だと思います。やはり一度非正規になってしまうと、正規社員になれないというケースが多く、そうした方々が不安を抱えておられます。

 また、女性の非正規の方は「年収の壁」問題があり、多くの方が106万円以下で就業調整をしていて非常にもったいない。アンケート調査によると、サービス業などでは7、8割の方が「壁」さえなければもっと働きたいと回答されています。

 やはり1980年代に作られた第3号被保険者(厚生年金に加入している第2号被保険者に扶養されている人で、かつ年収が130万円未満の人)は、共稼ぎが増えた今、このままでいいのか、議論も進めていかなければいけないと思います。女性の潜在能力が生かされていないのが日本の最も残念な点のひとつですが、逆に言えば可能性のあるところだとも思います。

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