医療分野の給付に無駄はないか?
─ 令和臨調では社会保障制度における医療・介護の給付について提言していますね。
翁 はい。例えば医療分野で、給付がすべて今のまま必要なのか、無駄があるのではないかということを感じている国民は多いのです。その点をしっかり議論していく必要があります。
医療提供体制や、保険の収載の範囲の問題もあります。例えばOTC(一般用医薬品)の問題があります。湿布薬やビタミン剤、風邪薬は薬局でも購入できる一方、医療機関でも処方してもらえます。薬局で高い価格で購入している人がいる一方、保険対象で購入している人もいるという不公平もあります。
また、一度保険収載された医薬品は、その後、効果が認められなくなって、次の効果の高い新薬が出たとしても保険対象のままなのです。価値の高い医療にシフトするうえでも、例えば効果が小さくなった医薬品を保険の対象から外していくことも必要になるのではないでしょうか。
他にも、一定期間内に処方箋を繰り返し使用できる「リフィル処方箋」という仕組みもありますが、殆ど使われていません。
こうしたことを進めていくだけでも、かなりの給付の見直しができるはずです。そうした対応をしてもやはり高度化・高齢化に伴う医療費増はあります。その増加をどう負担していくか、の検討に入るには、必要なところに必要なだけの給付になっているか、デジタル化でより効果的効率的にできないか、といった点の国民の納得感が必要になるのではないかと思っています。
─ 経営の厳しい病院も増えていますが、再編や連携についての考え方は?
翁 まず大事なのは、かかりつけ医師の「プライマリ・ケア」(身近で何でも相談にのってくれる総合的な医療)の医師が、1人の医師だけでなく医療機関間や、看護師、薬剤師といった多職種チームで連携して、24時間365日、地域で対応できる体制を作ることが必要です。高齢者が増える中、こうした強化策はますます大事になります。
また、病院の数は多いですが、高度な救急医療ができる病院を、しっかり地域に位置づけていくことは非常に大事で、プライマリ・ケアとの連携も必要です。機能分化と連携が今後のキーワードだと思います。