2024-03-11

翁百合・日本総合研究所理事長「企業は、企業価値向上と社会課題解決の『二兎を追う』成長戦略の実行を」

翁百合・日本総合研究所理事長




新しい資本主義の2つのキーワード

 ─ 岸田政権は「新しい資本主義」を掲げてきました。翁さんは「新しい資本主義実現会議」のメンバーでもありますが、今後どう進める必要があると考えていますか。

 翁 いろいろな考えの方がおられますが、「新しい資本主義」はこうであるという共通理解があるとすれば、私は2つのキーワードがあると思っています。1つは「二兎を追う」戦略ということで、成長戦略によって、企業価値向上と同時に、社会課題を解決することです。もう1つは「成長と分配の好循環」で企業の成長の果実を賃金で従業員にも報いていくことだと思っています。

 賃金を上げながら企業価値を上げて、サステナビリティを意識した経営をして成長していくという方向で議論されていると思います。同時に、ジョブ型、リスキリング、成長分野への労働移動の円滑化という労働市場改革も重要ですが、徐々に「人への投資」という考え方が進みつつあると実感しています。

 ─ コロナ禍もあり、財政出動もあったわけですが、財政健全化に対する考え方は?

 翁 財政を長期的に健全化していくことは大事だと思っています。国債に依存しすぎることはリスクが高いと思います。金利が上がると利払い費として財政に直接影響しますし、将来的にはより海外に消化を頼らなくてはならなくなるでしょう。

 その意味でも「ワイズスペンディング」が非常に重要だと考えています。財政支出全体を見直し、社会的リターンが高く、成長にもつながるような財政支出ができるようにしなくてはなりません。それが将来世代に対する私達の責任だと考えて議論する必要があります。

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