2024-03-11

翁百合・日本総合研究所理事長「企業は、企業価値向上と社会課題解決の『二兎を追う』成長戦略の実行を」

翁百合・日本総合研究所理事長




金利が付く時代の金融機関の心構え

 ─ 日本でも「金利が付く時代」が近づいてきた感があります。金融機関はどのような心構えで臨むべきだと。

 翁 金融機関にとってはプラス、マイナス両面があります。金融機関は低金利の中で利ざやが稼ぎにくい状況でしたが、金利が付くことは大きなプラスに寄与していくと思います。

 マイナス面は、20年以上の国債など期間の長い債券を保有している中小金融機関は多くありますから、金利リスクが顕在化しかねません。すでにメガバンクや地方銀行などでは外国債券の損失が顕在化しています。急に金利が上昇することは考えにくいですが、やはりリスク管理が非常に大事になってきます。

 ─ 今後チャンスが出てくるというのも事実ですね。

 翁 そうですね。取引先に関して言えば、いよいよ本当に事業再生を支援していくということです。コロナ禍では銀行の融資で繋いでいましたが、コロナ禍が明けたら、デジタル化の進展など、それまでとは違う世界が広がっていたわけです。

 デジタル化が進む中で、いかに自らのビジネスモデルを変えていくのかが、どの企業にとっても課題になっています。金融機関には、この事業再構築をサポートすることが求められるということだと思います。

 ─ 「生成AI(人工知能)」などの新たなテクノロジーと金融の関係は?

 翁 今後はさらに急激に状況は変わっていくと思います。すでにフィンテックによってキャッシュレスは大きく進みましたし、プラットフォーマーは顧客情報を得てeコマースと金融をうまく結びつけた事業を展開しています。

 また、金融機関は生成AIを活用して生産性を上げ、付加価値もさらに上げる時代になってきているということだと思います。他にも、金融と情報がいろいろなところでつながって価値を生んでいきます。例えば決済情報などをうまくつないで、中小企業の生産性を上げていくという課題もあると思います。

 ─ 24年から「新NISA(少額投資非課税制度)」も始まり、国民の間では資産運用に対する関心が高まっています。

 翁 政府は「資産運用立国」を掲げています。金利が付く時代、インフレになると預金に置いていては価値が目減りするということになります。

 1月から新NISAがスタートし、資産運用業への新規参入も促し、これらの投資家の透明化や情報開示など、インベストメントチェーンをつなげる議論が行われてきています。

 また、家計の金融資産も、新NISAで少しずつ動き始めていますが、金利が付く時代に移行する中で、預金だけでなく、投資にも関心を持つことが大事です。長期・分散・積立というやり方であれば、長期的には多くの場合、資産が増えていきます。老後が不安だという方も多いわけですが、こうした形で若い頃から資産形成に取り組むことが必要ではないかと思います。

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