「青の洞窟」ブランドが好調
─ 市場創造という観点で、パスタという加工食品の可能性をどのように考えていますか。
瀧原 当社ではパスタソース「青の洞窟」ブランドを展開していますが、これはお祝い事などで食べる外食のイタリアンに匹敵する商品になります。自宅でのディナーで高級感のあるイタリアンを楽しんでいただくために、パスタを使った付加価値の高いレシピを提案していくと。こういったコンセプトの商品を開発しています。
日本人が年間にパスタを食べている回数は20食と言われています。イタリア人は300食で、アメリカ人でも100食食べていると言われています。もちろん日本人はラーメンやそば、うどんなども食べているので、その分、差があるとは思いますが、20食はあまりにも低いと。
─ 付加価値のある商品を提案していくわけですね。
瀧原 ええ。通常ゆで上げるのに約10分かかるパスタでは、3分でできる早ゆでタイプのパスタが非常に伸びています。このように付加価値を付けることは加工食品では比較的提案できていると思います。そしてこういった加工食品は、これまでは日本向けが中心でした。
しかし、アジアの国々も日本と同じように食にこだわりのある文化を持っていますから、可能であればそういったところにも売っていきたいと思っています。海外展開では製粉事業はかなり進みましたので、これからの5年間は加工食品や、パンの発酵に適した酵母菌だけを集めて純粋培養したイースト等の海外展開にも力を入れていく形となります。
─ さて、瀧原さんの歩みとしては、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)などの交渉に絡む仕事をしてきましたね。印象的な仕事は何でしたか。
瀧原 2013年からTPP交渉が始まったのですが、11年ぐらいから厳しい環境になりましたね。当時は民主党政権でしたが、とにかくTPP交渉に日本が加わるというところの対応が非常に大変でした。まずは当社としてのスタンスを決めなくてはなりませんでしたからね。
そこで私が心掛けたのは当社として何を守るか。当然「今のままにしてください」と要望するのは簡単ですが、多分そういうわけにはいかない。相手はアメリカですからね。では何を守るかというと、原料と製品の国境措置の整合性を確保するということを目指しました。
実は原料小麦は国境措置マークアップといって5割ぐらいの関税がかかっていました。それ以外の一般の輸入製品だと2~3割。これがTPP前の元々の状態だったのです。そこで当社はこのバランスをしっかりと保つことが重要だと決めました。