TPP交渉で得た「誠心誠意」
─ そういったことを政府にも要望したのですか。
瀧原 はい。ただ、政府は全部を守りますというスタンスでした。整合性確保とは自由化を認めるということでもありますから、そこを妥協するように見えたわけですから相当厳しい声をいただきました。
そこで様々なやり取りを経て最終的には製粉協会として要望を出すことで折り合いがつきました。それが交渉における全ての根幹だったのです。その結果、国内は一枚岩になりました。
今にして思うと、これをやっていなかったら大変なことになっていたと思います。そして、その次はアメリカとの交渉になりました。アメリカ農業界としては全ての関税撤廃を求めると決め、小麦も全て開放して欲しいと要求してきました。
当初は味方だと思っていたアメリカが場合によっては敵になるケースを体験したのです。ですから、結構厳しい交渉でしたね。結果として原料も関税もそれぞれ国境措置が低下してバランスが取れた形になりました。
私としては、このときの貿易交渉は糧になりました。まずは日本の国内をまとめるのが辛かったですし、アメリカと激しい交渉をしなければならなくなりました。ただ、交渉の際には何度もアメリカに通って政府の要人や業界の人々に会い、自分たちの意見を訴えました。
そういう意味では、私の座右の銘は「誠心誠意」です。交渉事では、国益などそれぞれの立場がぶつかります。ところが誠心誠意向き合うからこそ、最後はどこかで折り合うところがあるものなのです。そこがどこになるかを見極めることが非常に重要なことだと思います。