2022-11-15

【日本最大の機関投資家】日本生命社長・清水博の「投資の王道」論

清水博・日本生命保険社長



職員同士も切磋琢磨して

 デジタル化で生産性向上をと言うが、デジタル機器を扱うのは人。人の潜在力をどう掘り起こすかという課題である。

「高齢の営業職員もいますが、使いこなしています。年齢に関係ないです。使わなければいけないと思うと、一生懸命自分で勉強します。営業職員同士で、いいライバル意識といい仲間意識。この2つが併存していて、日本生命の営業職員チャネルの現場の良さが出ています」

 例えば、Aさんも機器を使いたいが、なかなか使えない。でも、隣のBさんは使いこなしている。その姿を見て、Aさんも負けていられないと思う。自分もやらなければとライバル意識に火がつく。  

 しかし、自分1人のだけの力ではすぐに学習できない。そこで、一種のライバルでもあり、仲間でもあるBさんに聞く。そうすると、Bさんも同じ拠点内の仲間ということから、普段はライバルでもあるが、親切に教えてくれるという関係。産業構造転換期をどう生き抜くかという危機意識が職員同士の切磋琢磨につながっている。

顧客サイドも心理変化 「受動的」から「能動的」へ

 清水氏は1961年(昭和36年)1月生まれ、徳島県出身。1983年(昭和58年)京都大学理学部卒業後、日本生命保険に入社。国内に約1700人しかいないと言われる、統計学や確率論で商品設計を行うアクチュアリー(保険数理士)の資格を持つ。商品開発部長や総合企画部長などを歴任。2009年執行役員、2013年取締役常務執行役員という足取り。そして2016年取締役専務執行役員を経て、2018年4月社長就任。

 清水氏は社長2年目の後半にコロナ危機に直面した。

 人口構造の変化、またDX、GXによる社会の変化に加えて、コロナ禍で生き方・働き方改革が進む中、新しい時代の保険業の役割と使命を構築する立場。

「わたしが入社した約40年前は、生命保険に対して受動的で、自分で調べない、よく分からないと。分からないままに必要なんだろうと思って、説明を聞いて納得すれば入る。受動的な保険の入り方が多かった」

 清水氏が入社して40年経った今はどうか?

「能動的に自ら必要性を感じて、商品を調べて、数社を比較して、最後に自分で決めるという加入行動になっている」と清水氏。

 お客が受動的から能動的に動くようになった背景には、社会的に健康で長生きしたい─というニーズが高まってきたことがある。

 日本は超高齢社会に突入。65歳以上の人口比率が全体の21%以上を指すのを超高齢社会と呼ぶが、日本はすでに2007年にそうなり、2025年に約30%、2060年には約40%に達する見込み。世界1のスピードで高齢化が進む。

 最後まで健康で長生きしたいというニーズは、当の高齢者のみならず、若い世代を含む全世代で高まる。

 若い世代も、自分が歳を取った時のことを考えるなど、健康観が変わりつつある。

「ええ、健康と言うのは、病気が全くない健康体であれば、それは100%いいんですが、無病息災ではなくて一病息災と今は言われますね。ちょっと病気になっても、軽い段階で、もしくは早期に発見をして治療することでその病気と付き合いながら長生きする。そういう時代認識の中で、お客様自身が健康で長生きをしたいというニーズがあり、それにあった商品が選ばれる傾向が強くなっています」

 当然、保険サービスも変化していく。

 三大疾病(がん、脳卒中、心筋梗塞)に関する保険に加えて、生活習慣病や肝臓、膵臓など個人的に気懸りな病気の早期発見、早期治療に役立つ給付金を備えた保険などの商品開発・設計が進む。

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