2022-11-15

【日本最大の機関投資家】日本生命社長・清水博の「投資の王道」論

清水博・日本生命保険社長



保険との相性がいいヘルスケア事業

 こうした健康保持へのニーズの高まりを背景に、同社はヘルスケア事業部を設置。

 例えば、リスク予測サービスとして、企業や自治体と契約して、匿名のまま健診データ、治療データを提供してもらい、そうしたデータを詳しく解析し、どのようなリスクがあるのか、病状の段階ごとに診断するサービスもその1つ。

 また、糖尿病の予防サービスもそうだ。例えば、血糖値のチェックプランを作り、具体的に糖尿病にならないサービスを有償で提供するといった疾病予防サービスにも注力している。

 このヘルスケア事業は2017年から開始。この5年間で、リスク予測サービス関連では、すでに約250万人のデータを集積。「割と地に足のついた取り組みになってきた」と清水氏も手応えを感じ取っている。

 人の命や健康に関わるヘルスケア事業はもちろん、いかなる事業も着実さが求められる。「はい、着実に、地道に続けていくことが、その事業を確実に大きくしていくというのは経験則でもありますからね」と清水氏。

 何より、リスクが現実に起きたときに役立つ保険と、リスクそのものを減らすヘルスケアとの相性はいい─という清水氏の受けとめ方だ。

円安、株安、債券安と トリプル安の影響は?

 日本生命は総資産85兆円と、日本最大の機関投資家である。いまコロナ禍、ウクライナ危機に加えて、日米金利差から来る円安ショック、株安・債券安が起こり、世界的に金融市場が揺さぶられている。

 保険会社の二大事業と言えば、保険の引き受けと資産運用。保険引き受けは既述したように、DXを着実に実行していくことに尽きる。顧客から預かる保険料で構成される資産運用をこの金融環境下でどう進めていくか─。

「金利が上昇していく。ただ、その金利の上昇も国、地域によって違う。しかも日本の金利も上昇してはいるが、世界と比べれば低いままです。つまり(日米金利差のように)金利差が拡大し、円安が進んでいく。こうしたことで金融環境、経済環境が様変わりし、このことで大きな影響を受けています」

 何ごとにもプラスとマイナスの両面がある。グローバルに金利が上がっていくことで、短期的には株安・債券安という局面だが、プラス面は何か?

「日本もわずかながら、20年債、30年債でイールドカーブ(利回り曲線)が立ってきているように、上昇しているということは、新しく投資をする、投資対象の金利が上がるという意味で、長期的には金利の上昇効果はプラスに働いていきます」

 清水氏はこうプラス効果を述べながら、次のように続ける。

「一方で、日米の金利差が拡大していることによって、外貨建ての債券に対する、円のヘッジをかけていますが、円のヘッジコストがとてつもなく高くなっている。それでマイナスの影響を受ける。プラスとマイナスの影響を見ると、短期的にマイナスのほうがはるかに大きい。今年の運用比率は厳しいというのが全体の状況です」

 こうした混沌状況を生き抜く基本スタンスとは何か?

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