日本の農業に一石を投じる連合体
─ エア・ウォーターは非常に幅広い事業領域の仕事を手掛けていますが、豊田さんが今特に注力しているものは?
豊田 今、特に注力しているのは環境問題です。例えば、グループ会社のエア・ウォーター北海道は、北海道河東郡鹿追町で、国内で初めて家畜ふん尿をメタン発酵させて生成したバイオガスから水素の製造を行う実証実験を進めてきました。22年4月からは商用化・事業化しています。
さらに、これも国内で初めて家畜ふん尿由来の「液化バイオメタン」(LBM=Liquefied Bio Methane)の生産にも取り組んでいますが、北海道内の全畜産農家から集めることができれば、北海道におけるLNG(液化天然ガス)需要の半分ほどは賄える可能性があります。
─ エア・ウォーターは北海道を拠点としたアグリ(農産・加工)事業にも積極的ですね。
豊田 当社は青果物の加工や仲卸業務などを手掛けるベジテックと業務提携し、株式の一部を取得した他、業務提携していたカット野菜販売のデリカフーズホールディングスの株も追加取得するなど、両社との連携を強化しています。
普通の発想では、同じ機能を持った仲間を集めがちですが、今回の提携では「縦軸」で、青果物の調達から開発・加工、販売までの供給網を強化することができます。
従来は野菜を扱っているだけだったものが、加工されてサラダになることでコンビニエンスストアなどで販売することができます。そこには野菜だけでなく、当社が手掛けるハムなども入れることができるという形で、付加価値を付けると高い価格で売ることが可能になります。
─ エア・ウォーターはこの連合体のコーディネーター役になっていると。
豊田 ええ。ただ、新商品開発などに関しては、彼らの知恵も借りないといけません。「3社で共に大きな存在になっていこう」と言っているんです。
─ お互いの強みを持ち寄って、新しい事業を起こそうということですね。
豊田 そうです。これは日本で初めての取り組みです。ベジテックが仲卸、デリカフーズHDが主に中食、我々は農産・加工、物流といった機能を持っており、供給網の多くを押さえることができます。非常に高く評価してくれる方もいますが、脅威に感じているところもあるでしょうね。
この分野はほとんどが「一匹狼」ですから、これまでまとまるのが難しかった。ですからおそらく、今後我々のグループに合流したいと考える企業も出てくるのではないかと思います。