2023-04-18

エア・ウォーター・豊田喜久夫会長CEOに直撃!「新設した『ユニット長』にM&Aした会社のトップを据えた理由」

豊田喜久夫・エア・ウォーター会長CEO




子供達が「いい社名だね」と言ってくれて…

 ─ 旧大同ほくさんと共同酸素が合併してエア・ウォーターが誕生したのが2000年ですから20年以上が経ちますが、社名も浸透しましたね。

 豊田 そうですね。当社は当時の青木弘会長(故人)の構想を名誉会長(豊田昌洋氏)がサポートして、ここまで来ました。

 エア・ウォーターとなる直前、私は人事担当の執行役員でしたが、青木会長に「社名はどうするんですか?」と聞いたことがあります。その時に「それはエア・ウォーターしかないだろう」と言われました。

 ─ 青木さんはずっと「エア・ウォーター」という社名が頭にあったんですね。

 豊田 かつて大同酸素がタテホ化学工業の再建を手掛けた際、青木会長は「エア×(バイ)ウォーター」という言葉を使いました。ただ、当時は世間から「日本語としてどうか?」と言われたこともあり、長くは使わなかったんです。ただ、その言葉をずっと抱えていて、2000年に共同酸素と合併する際、すぐに「エア・ウォーターにする」と言ったわけです。

 ─ 青木さんは思いを言葉にするのが上手だったんですね。

 豊田 そうなんです。私は最初、エア・ウォーターという社名になかなか馴染みませんでしたが、子供達に社名を伝えたら「お父さん、いい名前だね、最高だね」と言ってくれました。

 ─ 改めて、経営は本気になって取り組む人がいなければ成り立ちませんね。

 豊田 成り立ちません。これまで私は、赤字の事業を引き受けては黒字化させるという仕事に取り組んできました。

 例えば当社では介護用シャワー入浴装置「美浴(びあみ)」を手掛けていますが、これは04年にキヤノンのグループ会社から買収したものです。ちなみに「美浴」という名前を考えたのも青木会長です。

 買収直後は苦労をしましたが、今では超売れっ子の商品となりました。ストレッチャーや車椅子に乗ったままシャワーを浴びることができることから、コロナ禍でさらに需要が伸びました。

 ─ 新型コロナの感染リスクを抑えられますし、人手不足にも役に立つ。

 豊田 そうです。実は私は長野県松本市に拠点を持つ社会福祉法人「梓の郷」の理事長も務めています。青木会長が立ち上げたものを私が引き継いだのですが、これも赤字だったものを黒字にしました。

 ─ どのように黒字まで持っていきましたか。

 豊田 介護に携わる人は「ハート」で仕事をしています。ハートというのは、自分がやっている仕事に対する誇りなんです。そして、誇りを持ってもらう時に大事なのが我々経営者の姿勢です。この2つが噛み合ったことで黒字が実現できたのだと思います。

 介護施設できちんとした利益を出すために必要なことは、サービスの質がいいことです。誰しもが「いい介護施設」に入りたいと思うわけですが、いい施設とは評判がいいところです。「あの施設はいいよ」、「きちんと面倒を見てくれるよ」という評判になれば、きちんと部屋が埋まり、利益を確保できると。

 ─ 介護に携わる人の意識も変わっていきますね。

 豊田 事業がうまくいくようになってから、多くの社員が介護施設を買収してグループ入りさせたいと言ってくるようになりましたが、私は全て止めました。

 そうして「本気になってやるなら認めよう。自分の資産を全て拠出するくらいの覚悟でやって欲しい」と伝えました。やはり仕事は本気でやることです。私自身も本気ですし、社員も本気になるよう、意識改革に努めてきました。その精神が大事なのだと思います。

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