このコロナ禍にあって、各地域会社の幹部、そしてグループ会社の社員には、どんな言葉を投げかけたのか?
「2020年にコロナが勃発したときは、誰に聞いても、こうしたほうがいいでしょうというアドバイスを出せる人がいないんですよ。百年に一回の危機ですからね」
コロナ禍がパンデミック(世界的大流行)として2年9カ月前登場したとき、どの国も、どの企業も、また誰もが有効な解決策を持ち得ていなかった。ワクチンは開発されたが、手探り状態が今なお続く。
企業はその中を生き抜かなくてはならない。大谷氏はどういうスタンスで臨んだのか?
「わたくしどもの企業精神に立ち返って、とにかく社員の生活の保障と、あと安全を第一に考えるために営利重視からキャッシュフロー重視に変えてくれと」
コロナ1年目から、欧米の主要都市はほとんどロックダウン(都市封鎖)に走った。経済はストップし、オーダー(注文)が入ってこなくなった。
世界72カ国・地域で生産・販売活動を行い、商標登録は177カ国・地域に及ぶYKK。ロックダウンの影響は大きかった。
予想外のパンデミックだが、キャッシュ(現金)の回転をストップさせるわけにはいかない。
必要不可欠な投資は続行するとして、「ただ、不急なものもある。不急なものに関しては、投資の時期、いわゆるキャッシュアウトの時期をできるだけ先延ばしすることと、不要な在庫は持つなと」
多くのグループ会社があり、キャッシュリッチなところもあれば、そうでないところもある。
「スリランカとかフィリピンとか、そうしたところの中小企業の会社はキャッシュをそんなにたくさん持っていませんから、無くなったら、しっかりとグループの中で資金が回るようにグループファイナンスをしています。そういう所をしっかりと見る」と大谷氏。
6つの地域統括会社がグループファイナンス機能も果たす─というガバナンス体制を敷いてきたことが、今回のコロナ禍で効いた。