金利がつく世界が正常
─ 取引において大企業、中小企業ともに意識を変える大きなきっかけになりますね。
三村 そう思います。今まで、大企業の中には「コストアップは中小企業に負担させればいい」という考えのところもあったかも知れませんが、今後は自分もサプライチェーンの一員として、コストも利益も適正にシェアするためにどうしたらよいかを真剣に考えなければなりません。
このことは、これまでお話してきた物価上昇の話にもつながります。これから、日本は消費者物価も含めて、ある程度物価が上昇すると予想されます。その場合には、金融政策を適宜見直すことも検討されていくのではないでしょうか。
─ やはり、金利がつく状態が正常なのだと。
三村 貸したお金は金利をもらう、借りたお金には金利を払う。これが本来あるべき姿だと思います。金融緩和が続く中で、ややもすれば異常な状態が当たり前になっています。しかし、いつかは正常化の道を辿らなければなりません。
─ その時には、多少の痛みを伴いますね。
三村 正常化に向かうプロセスでは痛みを伴うことも考えられます。しかし、国債の利払いが増えることで、国の財政再建に向けた議論を前に進められるかもしれません。
さらに今、企業も家計も現預金を積み上げていますが、金利が上がれば現金を保有していることの機会コストが大きくなります。そうすれば、これらのお金も、何らかの形で使われるようになるでしょう。
しかしながら、正常化に至るプロセスが長く続けば、企業にも家計にも政府にも大きな負担が課されます。金融緩和が長かったこともあり、思わぬトラブルが起こることもあるでしょう。経営者は覚悟して乗り越えなければなりません。
みむら・あきお
1940年11月群馬県生まれ。63年東京大学経済学部卒業後、富士製鐵(現・日本製鉄)入社。72年ハーバードビジネススクール卒業。93年取締役、97年常務、2000年副社長を経て、03年社長、08年会長、13年11月相談役名誉会長、日本商工会議所会頭に就任。