2023-08-01

経団連会長・十倉雅和の「民間経済は対話の精神でソリューションを」

十倉雅和・経団連会長




賃上げ問題に日本全体でどう取り組むか

 経済の主役は民間企業。人口減、ウクライナ危機の中で、資源・エネルギーなど原材料高騰という制約が多い中で、成長をどう実現していくかという課題。産業再編も不可避で、「会社は守らないが、雇用は守らなければ」という声も出始めた。

 今、産業界では〝賃上げ〟が進む。バブル経済がはじけた1990年代初頭から約30年間、日本は〝失われた30年〟に入り、賃金も上がらなかった。コロナ禍が一段落した今、日本経済は株価上昇やインバウンドの観光客が押し寄せ、活況を取り戻しつつある。

 業況は改善されつつあるが、ウクライナ危機は依然続き、米中対立、台湾有事問題などグローバル世界でも緊張感が求められる。

 何より、日本再生を確実にしていくためには、肝心の企業の生産性を上げるということを図っていかなくてはならない。

 賃上げ問題についても、大企業は3%以上の賃上げを実現したとして、中小企業はどうかという日本固有の課題がある。

 日本全体の企業数約370万社の内、99%は中小企業だ。そして全雇用数の7割を中小企業が抱える。その中小企業の賃上げの実態はどうなっているか?

 商工会議所関係者が語る。

「大体3%以上の賃上げができたのは約4割。賃上げしないと、人が採れないとして、1%程度のアップも含めて賃上げの形を取ったのが約3割。残りの3割は賃上げできなかった」

 賃上げは、人手不足問題とも絡んでくる。人手不足は全業種、全領域が抱える課題。人口減少は今後、長期間続く。その中で、経済人の役割とは何なのか?


2期目の今、格差問題を

 十倉氏は2021年6月、経団連会長に就任。現在は2期目を迎えたばかり。

「1期目は社会課題というか、生態系の崩壊、地球温暖化問題に取り組みました。そして、グリーントランスフォーメーション(GX)で提言し、今年5月GX関連法が通りました。あれは随分、経団連の主張というか、提案を採り入れていただいて、われわれなりに貢献できたという自負はあります」

 十倉氏は会長1期目の仕事をこう総括し、2期目については前述の通り、「格差の問題に焦点を当てていく」考え。

 折しも、岸田文雄政権は『新しい資本主義』を訴え、〝成長と分配の好循環〟政策を掲げる。

「われわれ経団連も成長と分配の好循環、これをきっちりシステムとして捉えてやることに注力します」と十倉氏は語り、「トリクルダウンでは、分配の問題は解決できないと思っています」と強調する。

 トリクルダウン(trickle down、滴り落ちる)─。富めるものが富めば、貧しい者にも自然に富が滴り落ちるという意味で、18世紀の欧州で起きた経済思想。21世紀に入ってから、いろいろな危機が複合化し、トリクルダウンの考えには否定的な声も多い。では、どういった手(政策)を打つべきか?

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