2023-08-01

経団連会長・十倉雅和の「民間経済は対話の精神でソリューションを」

十倉雅和・経団連会長




国と民間経済との関係

 日本再生へ向け、政府と民間企業、政治と経済の関係はどうあるべきか─。

「政治と経済は、べったりがいいというわけではないんですが、やはり良い連携をしないといけないと思います。今までのように野放図なグローバリゼーションをやればいいというのではなくて、経済安全保障問題も出てきていますからね。それから、市場任せにしたら、かなり失敗もあるので、やはりパブリックセクターの出番も増えてくると。その一番の典型は政府ですし、政府と経済界が連携を良くしてやらなければいけない」

 要は、日本の将来ビジョン、あるべき姿をどう描き、どう実現していくかということ。

「そういう意味では、われわれは今、岸田内閣の掲げる『新しい資本主義』と、われわれが掲げている『サステイナブルな資本主義』、これはわれわれのほうが早かったんですが(笑)、本当にコンセプトが軌を一にしているので、ぜひ良い連携をやりたいと。意見の対立は所々あると思うんですけどね」

 今は『複合危機』の時代と言われる。想定外の事が次々と起き、価値観の違いが絡み合って、対立や軋轢を生む。その中で「イノベーションを生み出す日本にしなければ」とは某経団連副会長の弁。危機感の中で士気は高い。

 お隣り中国との関係はどうあるべきか?


中国との関係は?

「これは、G7も『デカップリング(分離、対立)』という言葉は良くないと。言葉を変えたから良くなるものではないですけれども、ただ『名は体を表す』で、方向性は出ると思うので、『デリスキング(リスクを避ける)』というわけですね。世界は中国無しではやっていけない。中国も世界なしではやっていけないわけですよね。この現実をどう捉えるかです」

 十倉氏は現実を押さえながら、中国との関係の進め方について次のように述べる。

「ただ、やはり価値観とか、自由や人権とか、そういう所でどうしても相容れない所があるので、経済安全保障みたいなことが出てくる。それはそれでありながら、それ以外の所はきちんと関与を通じていく。G7や他の国も含めて、中国とは積極的に関与、エンゲージメントをやっていくと。中国に対して、G7の懸念もちゃんと伝えると。要するに対話をしていくと」

 法の支配、人権、自由を大事にするG7などの自由主義陣営と、共産党独裁の中国とはモノの考え方で違いがある。

「はい、経済政策、経済的威圧があると言われています。そういうのがあって、中国問題でのそうしたグローバルなアジェンダ、課題に対しては日本も協力しないといけないし、中国もわれわれに関与してほしいと」

 十倉氏は、「とにかく、民間経済は対話なくしては駄目なので、韓国との関係もそうですよね。どんな時でも、やはり対話が一番大事だと」と強調する。

 グローバルにも、国内にも多くの危機が存在する。政治が対立している時に、国と国、人と人をつなぎ、対話で課題解決策の糸口を探し出すのが経済人の役割という十倉氏の訴えである。

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