2023-08-01

経団連会長・十倉雅和の「民間経済は対話の精神でソリューションを」

十倉雅和・経団連会長




いま、リーダーに求められる『覚悟』

 こうした社会全般の動きの中で、「だから、経済社会というか、そういう所にもわれわれも提言をして、関わっていきたい」と十倉氏は語る。

 少子化問題について、経団連は『静かなる有事』と捉え、解決策づくりを進めたいとする。

 少子化問題は『ブラック・エレファント(黒い象)』とも呼ばれる。「はっきり大問題になると分かり切っているのに、なかなか手を付けられなかった」と十倉氏。

 少子化問題は国や行政の財政とも直結する。子育てを担う若い世代も平均的所得の低下で、子どもをつくれないという状況が重なる。平均的所得を伸ばすには、やはり日本の経済成長を高めなければいけない。

「政府が『次元の異なる少子化対策』ということで、かなり中長期を狙うのであれば、やはり全世代型社会保障改革が求められるし、これは財源問題にもつながりますので、時間がかかるだろうと」

 人口減から来る日本の基本的構造問題。中でも、日本の未来を背負う子どもたちのために、少子化対策を実効あるものにするのならば、その財源確保は避けては通れない。

「はい、社会保険料をどうするかということだけでは絶対無理なんだと。やはり税も含めた一体改革をやる。これは実にしんどい話ですけれど、言うからには十分検討して進まないといけない。経団連としても、そういう提言をさせて貰っています」

 国民負担問題を含め、政治も、経済も『覚悟』が求められている。


構造問題の解決は?

 今、日本経済は活況を呈している。世界的に著名な投資家、W・バフェット氏も日本株を見直し、選択的な集中投資を行っている。全体的に企業の業績もいい。

 日本銀行が発表した6月の全国企業短観(短期経済観測調査)でも、製造業は7四半期ぶりに改善。半導体不足などの供給制約が緩和されたのと、資源・エネルギー価格の上昇が一段落したなどの要因が背景にある。

 非製造業でも、ホテルや飲食店などのサービス業がインバウンド(訪日外国人)の大幅増加などで、5四半期連続で改善。

 短期的に明るさは出ている。しかし、海外経済は中国の景況悪化、欧米はインフレ基調で波乱要因を抱えており、日銀の金融大緩和策も修正、ないしは転換局面を迎え、市場も神経をピリピリさせている。

 人口減少から来る需要減、人手不足、そしてグローバル競争を生き抜くため、企業の生産性アップという中長期視点での基本構造問題は残る。

 いま、国の税収入はどうか?

 短期的には税収も伸びている。基幹3税(消費税、所得税、法人税)は共に伸び、2022年度の一般会計の税収は約71兆1373億円。過去最高を更新した。

 特に税収増を牽引したのは消費税で、23兆0792億円と基幹3税でトップ。以下、所得税収22兆5217億円、法人税収14兆9397億円という順。

 円安や資源・エネルギー高で物価上昇が続き、食料品や日用品、そしてサービス価格が上がり、消費税増収につながった。

 また、所得税収も産業界の賃上げで給与所得が伸び、株式の配当収入なども税収増を支えた形だ。法人税増収も、大企業を中心とした業績の向上があり、特に円安効果も加わっての好業績が背景にある。

 税収が増えたと言っても、一般会計歳出の6割しか賄えないという現実がある。赤字国債依存という構造的問題は残る。

 全世代型社会保障改革を進める上でも、財政改革は避けられず、消費税を含む増税議論は不可避という指摘もある。

 その意味で、政治、経済リーダーの覚悟が求められている。

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